とりな歌

いろは歌」ならぬ「とりな歌」として親しまれ、かつては教育現場にも使われた美しい詩があります。

とりなくこゑす ゆめさませ
みよあけわたる ひんがしを
そらいろはえて おきつべに
ほふねむれいぬ もやのうち
鳥啼く声す  夢覚ませ
見よ明け渡る 東を
空色栄えて  沖つ辺に
帆船群れ居ぬ 靄の中

本当にあらゆる意味で美しい…ですね。かな48文字を1回ずつしか使わずに、かつ意味のある詩文の体をなす、そんなフレーズには、たとえば「いろは歌」があります。(いろは歌には正式には『ん』は含まれませんが。)明治36年、新聞「万朝報」がこのようなフレーズを募集したところ、松本百次郎氏が「鳥啼歌」として応募したものだそうです。(1903年)
※ちなみに「東」は古代において「ひむがし」でしたが、明治のころまでにはなまって「ひんがし」としてもオッケーでした。明治の人たちも現代の私たちも、もっぱら「ひがし」と理解していますけれど。「ほふねむれいぬ」あたりは超絶技巧と言わざるを得ません。