1/2派の気分

1/2派だった私

最初、私は1/2派でした。以下のような問題と等価であると考え、この問題が自分の身の上に実際に降りかかったときに、私はどう考えるのだろうか、と自問自答した結果、私は1/2派だったのです。

酔っ払い鉄道

酔っ払い鉄道問題文図解
私は酔っ払いである。やっとの思いでX駅にたどりついた。自宅はA駅周辺である。なんとかたどりつきたい。切符を買ってホームに出たら運良くA駅方面への列車が今にも出発しそうだったので駆け込み乗車をした。泥酔状態の私は座席につくなり安心して眠ってしまった。
実はこのホームから出る列車は、A駅が終点の列車とA駅経由B駅終点の列車の二通りがある。酔っ払った私がどちらの列車に乗るかは、確率がフィフティーフィフティーであるとする。泥酔の私でも、終点に行けば、車掌が起こしてくれるので、A駅終点の列車に乗れば私はすぐに帰宅可能であるし、B駅駅終点の列車にのれば、B駅からA駅までタクシー料金を支払うという出費が待っていることになるだろう。
列車の中で眠り込んだ私は、幸いにも列車が鉄橋の上を走る轟音で目覚めることになる。ただし、鉄橋をすぎればまたすぐに眠り込んでしまい、起きている間のことは忘れてしまう。したがって、次の駅がもうすぐだから起きていよう、などということはできない。酔っ払いだからしかたがない。さて、X駅からA駅までに鉄橋がひとつある。A駅からB駅までのあいだに鉄橋がまたひとつある。つまり、A駅が終点の列車では私は鉄橋による目覚めをひとつ経験し、A駅経由B駅終点の列車では、私は鉄橋による目覚めをふたつ経験する。なお、ふたつの鉄橋による目覚めは区別ができないものとする。景色や、車内放送ほか、得られる情報はないものとする。

問2:「(鉄橋の轟音で)さぁあなたは目覚めた。あなたが、A駅終点の列車にのっている確率は?」

かつての私は、上の設問に対し、いとも簡単に、「1/2」、ファイナルアンサー。と答えたのである。

だって、酔っ払いである私が、A駅終点の列車にのる確率は1/2なんだもーん。 いくら途中で鉄橋で目が覚めたって、その事実にはかわらないんだもーん。 それにぃ。1回目で目覚めたことと(もしあればだけれども)2回目で目覚めたことと区別がぜんぜんつかないんだもーん。だとしたら、B駅終点の列車でいつ目覚めてもそれは1回目に目覚めたのとなんら主観的には変わらないんだもーん。いつ目が覚めても実質1回しか目が覚めていないのとおんなじじゃね?だったらA駅行きでもB駅行きでも目覚めたことで得られる情報って同じなんだもーん。

・・・上の設問で1/2じゃね?と思う人は結構多いのではないかと思うんですよね。あれ?少ないですか?がっくり。

眠り姫問題1/2派への反駁

問2について1/2であると答え、問3について1/3であると答える眠り姫問題1/2派の諸兄がたに反駁してみます。問2について1/2と答えるのであれば、問3についても1/2であると答えるのがまっとうなのではないでしょうか? つまり、1/2原理主義派かもしくくはニック・ボストロム派になっていただくしかないのです、たぶん。

まず、次のような眠り姫問題の変形バージョンを考えます。

場合A場合Bともに初期設定で月曜日と火曜日に目覚めることとします。他の設定はオリジナルと同じです。

◇問1「今は日曜日、実験開始の直前である。場合Aである確率は?」

◇問2「さぁ、あなたは目覚めた。教えてやろう。あなたが目覚めたのは場合Aの月曜日かもしくは場合Bの月曜日かもしくは場合Bの火曜日である。場合Aである確率は?」

◇問3「さぁ、あなたは目覚めた。今は月曜日である。場合Aである確率は?」


さて、1/2派の皆さんの問1への回答は1/2だろうと私は予想します。間違いありませんよね? 
ならば問2への回答は? この変形版眠り姫問題でもオリジナルの眠り姫問題でも、まったく同様に、あなたが目覚めたのは場合Aの月曜日かもしくは場合Bの月曜日かもしくは場合Bの火曜日なのです。 どこにも変更がありません。 1/2派の皆さんは意見の相違のために、ここで内部分裂をするかもしれませんね。答えを二通り予想してみましょう。

ピーチ姫派::問2への回答は、1/3。
デイジー姫派::問い2への回答はあくまでもオリジナル版と同じで1/2。

まずピーチ姫派の場合ですが、あなたがたは既にオリジナル眠り姫問題の1/3派になりさがっています。問3への回答は1/2ですね? あなたがたは本当に1/2派なのでしょうか? 動揺分子ではありませんか?

次にデイジー姫派の場合を。 頑固ですねぇ。 この変形版眠り姫問題の特徴は、初期設定において、場合Aでふたつの目覚め、場合Bでふたつの目覚め、ということでしたね。 そして、問2において、場合Aのふたつの目覚めのうち片一方を減らしてみたわけです。 でもあなたがたの確率は変動せずに1/2のままです。 では問3についてはどうなのでしょう? 場合Bのふたつの目覚めのうち片方を減らしてみたわけです。オリジナル版動揺に今度は確率変動して2/3になるとおっしゃいますか? このへん、行動に首尾一貫性をもっていないように見受けられます。 つまり、場合Aの目覚めが減っても確率変動しないのに場合Bの目覚めが減ったときだけ確率変動させる。これって怪しいですよね? ね? ね?

首尾一貫とした態度をとるためには、問3について場合Bのふたつの目覚めのうち片方を減らしても、場合Aの確率は1/2のまま、と答えるのがよろしいでしょう。 結果として、ニック・ボストラム派と同じ結論になるはずです。もしくは、精密なベイズ判定の計算をして1/2原理主義派へと身をやつしても良いでしょう。

以上が眠り姫問題1/2派への反駁です。