量子暗号の原理にセキュリティホールがあるのか(4)

CHSH不等式

量子世界の非局所性について最も印象的なベルの不等式の破れ。でもまぁベルの不等式はわかりにくいかもしれないのでより初等的なCHSH不等式ってのがある。

http://www4.ocn.ne.jp/~johnny/bell04.htm

とまれ、「ある」し、量子力学が正しければCHSH不等式は破れている、局所古典論は通用しないというわけだ。

CHSH不等式の破れについてのわかりやすい説明

id:nucさんがこれについて本当にわかりやすく書いてある。

http://d.hatena.ne.jp/nuc/20060710/p3
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20060710/p8
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20060710/p11
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20060710/p13

CHSH不等式を利用した超光速通信::hoshikuzu流

nucさんの記事から引用。


さて、これは何を意味しているのだろうか。古典的には Alice と Bob はどんなに入念に作戦を立てたとしても、75% を超える確率で勝てるはずがなかった。ところが EPR対を交換しておくだけで、85%まであげられた。

EPR対を交換したアリスとボブ。アリスがこのEPR対のコヒーレンスを壊せば、統計的に勝率が75%までに下がる。なので統計的に1ビット送れる。 あとは何セットか勝負すればよい。

不思議でしかない。が、本当なのだ。だが勝ったか負けたかが後になってわかるのかもしれない(謎

CHSH不等式を利用した超光速通信::補考

nucさんの事例では、実はこのままでは超光速通信は出来ておりません。神の視点では、確かにアリスからボブへ、勝率の良いデータと悪いデータとを送っているのですが、ボブにとってみると、勝率が良いのか悪いのかをアリスからの情報抜き、単独で、知るすべがあるのかないのか不明だからです。後刻、アリスから電話なのでアリス側ではどうだったのかをボブが知ったときに、結果論=アトヅケで、あぁ、ここでは勝率が良かったのか、あそこでは勝率が悪かったのか、と知る羽目になるからですね。

ところでボブが単独で勝率の良い統計集団と悪い統計集団とを知るすべは本当に原理的にありえないのでしょうか?1年前から(nucさんの記事が出たのはその頃です)気になってしょうがなかったんです。

手前勝手な希望をこめて、こんなのはどうでしょう。先日の日記でご紹介したステファン・ウォルボーンたの実験のパクリなのですが。ボブ側において、二重スリット実験を行います。スリットの手前では、シュテルン-ゲルラッハの実験と似た機構をそなえておき、スピンによる振り分けを行ってスリットの2個の穴のうちどちらを通りそうなのかを案内してしまいます。(ここで純粋状態が壊れないと良いのですが・・・)。電子があたるべきスクリーンとしては、スピン注入磁化反転デバイスを綺麗にならべたものを使用・・・このスクリーン上でスピンの向きを判定しつつ電子の着弾位置の干渉模様を見てやろうという・・・

CHSH不等式を利用した超光速通信::補考2

量子暗号には、量子鍵の元となる状態の配布後に、アリスとボブが量子鍵の生成を行うステップがあります。その際、盗聴者がいないことを確認するために、アリスト3ボブは電話回線などを通じて口頭で互いにある種の情報のやりとりを行うわけです。(もちろん自動化はできます)

この電話を使ったやりとりをなりすまされると量子暗号は脆弱かもしれません。なので、ボブ側は、アリスからの電話情報抜きでなんとかできないかと考えてみるのも面白いでしょう。

ウォルボーンらの実験では、干渉項の出現消失でもってボブ側が単独で、EPR対のエンタグルメントが壊れているのかいないのかを知るすべがあるということを示唆しています。

量子暗号(たとえばBB84などの規格)に、この性質がなんとか応用できないでしょうか・・・

仮に応用できるとすると、非局所性は、すでにアインシュタイン因果律の夢をうちくだくことになりそうですけれども。