【反】相対論の主張の弱点について

マイケルソン・モーレーの実験

アンチ相対論者はその主張の柱として、マイケルソン・モーレーの実験について述べていることが多いです。独自の考えがバリバリなので読んでいる分には面白いですし、彼ら【反】相対論者が嫌う【正統】科学者の一部は初学者への啓蒙のために、【反】相対論者が述べているマイケルソン・モーレーの実験についての解釈に正しい視点から反論を述べています。

マイケルソン・モーレーの実験は絶対静止系の観念や所謂エーテルなどの観念ともあいまって想像をたくましくさせるものが確かにあろうかと思います。マイケルソン・モーレーの実験の自家版解釈は面白いのでしょうね。ブルーバックスなんかで相対論について読んだくらいの人ならばグイグイ引きこまれるのかも知れません。

特殊相対性理論は、【光速度不変の原理】を仮定して導出、説かれています。反相対論者には、この仮定が気に入らないのでしょうね。ですから、この仮定がマイケルソン・モーレーの実験によって裏付けられている実験的事実であるなんて信じたくもないのでしょう。よって、この実験は間違いだの、誰も追試をしていないだの、実験は合っているけれどその解釈がオカシイだの、色々と作戦を練るわけです。

まぁ実験の姿が光の性質の確認なのでその辺も反相対論者を刺激するイマジネーションを与えるのでしょう。光がどうしたとかエーテルがどうしたとかの考えに縛られていることも考えられます。その自縄自縛から抜け出て頂きたいのですが。

ところで【光速度不変の原理】とは何かを、別の表現をしておかなくてはいけません。即ち、【Maxwellの電磁方程式がLorentz変換のもとに共変的である】ということ。(電磁場の表現はGalilei変換のもとに共変的ではない、ということよりも強い要請です。)光なんて付随的な問題で、真の本質は電磁場の性質にあるわけ。そしてこの共変性を表すひとつの形として【光速度不変の原理】がありうるのであって、この表現であるならば、たまたまマイケルソン・モーレーの実験で劇的に証明されているのですね。

ヘルツの方程式

反相対論者はローレンツ変換を目の敵にするようです。ガリレイ変換こそが唯一正義なのでしょう。昔、マクスウェルが書き下ろした電磁方程式は難解極まるもので簡単に全体像が見出せるものではありませんでした。それを綺麗にベクトルの形で整理し書き直した人がヘルツです。教科書に書いてあるマクスウェルの方程式は実はヘルツが書き直したと言って良いのです。

ヘルツはそれだけに留まりませんでした。マクスウェルの方程式をガリレイ変換してみせたのです。ニュートンの力学方程式がそのもとで共変的であるガリレオの相対性原理の変換則でもって、マクスウェルの電磁方程式をさらに書き直してみたのですね。これは当然の欲求でしょう。【ガリレイ変換の元で共変的であることを目標においてマクスウェル方程式を書いてみた】その新しい方程式をヘルツの(電磁)方程式と言います。数式だけ見ればそれなりに美しい方程式です。ヘルツの方程式は物理学の実験結果を綺麗に導き出せることが期待されました。

2つの実験

ヘルツの方程式から導きだせる実験的予言は現実世界で確認されなくてはいけません。2つの実験が試みられました。ウィルソン(Wilson)の実験とレントゲン(Roentgen)・アイフェンヴァルト(Eichenwald)の実験です。前者は回転する誘電体の実験でしたし、後者は誘電体を磁場中で回転させて分極を作る実験でした。

結果は、両方ともヘルツの方程式を否定するものでした。数値が合わないのです。このことから、【マクスウェルの方程式をガリレイ変換しても現実世界を記述したことにはならない】ということが判明したのです。ヘルツの理論は敗北しました。いえ、ヘルツ自身、実験に先立って既に敗北を予期していたかも知れません。その種の理論考察は物理の世界ではよくある話です。

なお、アインシュタイン特殊相対性理論に従えば上の2つの実験を見事に説明することが出来ます。【マクスウェルの方程式をローレンツ変換した方程式=マクスウエルの方程式(ローレンツ変換のもとで共変)、は現実世界を記述している】ということを2つの実験は強く示唆しています。

反相対論者への批判的説得

正統派の科学者は反相対論者に対して、【世の中はガリレイ変換に従うと信じる】彼らの枠組みによって上記の2つの実験を合理的に説明してみよ、と迫ってみてはいかがでしょうか。反相対論者は、自説のマイケルソン・モーレー実験考察だけでなく、ウィルソンの実験やレントゲン・アイフェンヴァルトの実験を(ガリレイ変換でのヘルツの方程式との矛盾を)説明出来なくてはいけません。

ガリレイの相対性原理は世界を記述していないのだ、という実験結果を、自説で綺麗に反駁できないのならば、反相対論など簡単には言えないはずなのです。

その他、1851年のフィゾーの実験(流水中の光の速さの実験)をフレネルが試みたようなエーテルの随伴による不合理な説明抜きに、新しい合理的な説明を反相対論者は行わなくてはいけません。

ちなむと、2つの実験およびに、フィゾーの実験は、共に、β=(v/c)に関する1次の効果として相対論から出てきます。一方、βに関する2次の効果を調べるためにマイケルソン・モーレーの実験を使うことが出来るのですが。反相対論者は、βの2次の効果ばかり気にしないで1次の効果までも気にして欲しいなあというのが本項のツモリでもあります。精度の問題もあるので順番にね♪

ローレンツ

ここまでの実験を綺麗に説明するために、ローレンツは局所時なる概念を導入し、マクスウェル方程式ガリレイ変換に従わずローレンツ変換に従うものと考えました。まぁ実験結果を一応理論が説明できる水準に達したわけですけれど。

反相対論者は、アインシュタインがニックキ局所時の発明者だと言って非難することがありますが、ローレンツが先行していますので、そのあたりも勉強してください。せめてローレンツが苦しみながら説明した理論ぐらいは突破して頂かないと反相対論として何を言おうが信じることは出来ません。

ローレンツを超えて…

やっぱりアインシュタインって偉いんだわと、今更ながら思いました。くはぁ。さ、ビールでも飲みましょうかね。いつものように校正せずに日記をアップします。