あさどやユンタ

琉球は八重島の民謡、あさどやユンタには、謎のオハヤシがつくのです。
「またはりーぬ てぃんだらかぬしゃんよー」
語意の解析にはいくつか有力な説があるようですね。さて、同意する人が少ない異説をひとつご案内します。
「てぃんだら かぬしゃんよー」は アマテラスであると。「てぃんだら」を「天照」に当てます。「かんしゃん」には「神様」を。 これは驚きの説ですね。 でもこれだけだと迫力がありません。

そこで、この異端の説に、個人的に気がついたことを付加してみます。 ポリネシア系民族の古層の言葉に「マタ ハリ」という単語があります。現在はインドネシアでも使っているようですが、本当に古い時期から広く使われてきた語のようです。あさどやユンタのハヤシ言葉の冒頭の「またはりーぬ」をこれで解釈する説は有名です。すなわち、マタ ハリは「太陽」を意味する単語だからです。すると、「またはりーぬ てぃんだら」は、「太陽神 アマテラス」をさすことになってしまいます。 これ、ちょっと驚きますよね。偶然の一致なのでしょうか。皇祖神アマテラスといえばもちろん、太陽神ですから。

これだけだと迫力が足りませんね。 ポリネシア系の単語の「マタ ハリ」は、実は、ポリネシア系言語の文法に従って「名詞 形容詞」の順番に作られた造語です。 語意として「マタ」は、「目」を意味します。そして、「ハリ」は、「昼」を意味します。 ポリネシアの人々は、太陽を「昼の目」として意識しているのですね。 さて、文法を変えてみましょう。 形容詞名詞の順に。すると、マタハリを訳するとヒルメになります。
でたー。オオヒルメのムチ。これはアマテラスオオミカミの有名な別名です。
どうです、この偶然の一致! あさどやユンタのお囃子の中に二回も太陽女神アマテラスの名が織り込まれているとは!

もう少々お付き合い願います。 琉球方面で太陽を「ティダ」と言いますが、本土方面の「天道」から来たという説があるようです。おてんとさまですね。でもこれ、漢語由来ですから、漢語流入以前の古語にさかのぼれば別の単語で太陽を意味する単語があったに違いません。しかしこれを、「ひるめ」ないし「またはり」であったとする証拠はありません。方言辞典でも確認しましたが、関連類似語はみつかりませんでした。本当はどうだったのでしょうか。タイムマシンが欲しいなぁと思ったりします。

しかたがないので、太陽方面はあきらめて、「ハリ」という単語に目を向けます。これ、「昼」の語源になっているかもしれませんよね。1万年ほど前に南島から日本に来た語の末裔。我々は天気がよいことを「晴れ」ともいいますからね。ポリネシア系統の語と共通しています。
次にポリネシア系の「マタ」に目を向けます。この語がはたして日本語成立に影響を与えているものなのでしょうか? 
私たちは、「ヒゲ」「マユゲ」「ハナゲ」など、顔には得ている毛に「foo」+「ゲ」と名づけています。「foo」は顔の部位相当だと思われます。ヒゲのヒは頬と関連があるのでしょう、おそらく。そこで、「マツゲ」を思い起こします。「foo」が「マツ」になっています。つまり、目の古い形が「マツ」であったと推察できます。 ポリネシア系の「マタ=目」と共通性があることがわかります。
また、今でこそ、私たちは「目」といったら「メ」と発音しますが、古くは、目を指して「マナコ」と言うのが普通でした。マナコの「マナ」は、「マタ」が訛ったものかもしれません。
語源不肖とされる日本語の単語があります。「涙=ナミダ」です。一番よい通説では、ナミダを分解して、「ナ」+「ミダ」と見ます。このとき、「ミダ」は水をあらわすだろうというのです。なるほど、ナミダは、「ナ」の「水」なのですね・・・・ちょっと待って! 「ナ」って何?目と関連がある語なのでしょうか?
これをポリネシア系の輸入語とみる説があります。ポリネシア系の言語では、「名詞形容詞」語順がみうけられますから、「ナミダ」を「ナ」+「ミダ」と分解すると興味深いことが出てきます。ポリネシア系の言語のグループの中には、「ナ」を水とみなします。この場合、「ミダ」は、「マタ」の変形で、「目」をあらわします。 つまり、ナミダ=ナマタ=目の水です。 これなら、かなりスッキリした語源解釈が可能です。
以上のように、マタ・ハリ=目・昼=昼の目=太陽が、日本語・琉球語にも影響を与えてきたかもしれないという蓋然性を傍証できます。
日本書紀古事記に出てくる太陽神アマテラスが別名オオヒルメの神であることの語源の秘密も、こちらあたりにあるのではないでしょうか

かつて江戸時代の学者・新井白石邪馬台国を「ヤァマタハイ」と読むのだと主張していました。「ヤァ」+「マタハリ」の訛りであったとしたらどうしょうか? 太陽の国、邪馬台国邪馬台国の首長が太陽神を祭っていても不思議ではありませんね。 その名は ヒミコ。 ヒのミコです。 日は太陽。ミコは巫女。 ことによったら邪馬台国名の語源はマタハリ、このあたりにあるのでしょうか?
なお、中国の史書の一書に古代の倭国の存在する場所を馬台としています。ヤマタイではありません。ヤが抜けている。マタイ。マタハリ→マタハイの影響でしょうか?

以上、いわゆる体系妄想をまくしたてました。(笑