高校生の勘違いを正すための思考実験

(その後以下の記述には大きな間違いがあると判明しました。すみません)

ピーター・ポール・マリーの三つ子の兄妹に登場願うこととします。ピーター兄とポール弟は一卵性双生児、同時に誕生したマリーは二卵性の妹です。※仮想的なやりかけ思考実験であるので一卵性や二卵性など本質とは無関係です。

最初にピーター・ポール・マリーには地球近くの人工衛星にいていただきます。マリーにはそのまま人工衛星にとどまって頂きます。ピーター兄とポール弟にはそれぞれに貸し与えられた別々のロケットに乗っていただきます。

二つのロケットは、等加速度=Aの出力しかできないものとします。なお、減速にあたっても同じ出力を使います。加速度=マイナスA、ですね。

ポール弟には、以下のように飛んでもらいます。

  1. 最初に人工衛星にいます。
  2. 加速度Aで時間Taの間、進んでもらいます。
  3. 時間Tbの間、慣性航行してもらいます。
  4. 負の加速度Aで時間Taの間、減速します。
  5. この時点で人工衛星からみてロケットの速度はゼロ。
  6. (おりかえしになります。)
  7. 加速度Aで時間Taの間、戻ってもらいます。
  8. 時間Tbの間、慣性航行してもらいます。
  9. 負の加速度Aで時間Taの間、減速します。
  10. この時点で人工衛星に到着、速度はゼロです。

一方、ピーター兄には、以下のように飛んでもらいます。ポール弟とほぼ同様ですが、二箇所だけ飛行計画に変更があります。

  1. 最初に人工衛星にいます。
  2. 加速度Aで時間Taの間、進んでもらいます。
  3. 時間Tbの間、慣性航行してもらいます。
  4. さらに時間Tbの間、慣性航行してもらいます。
  5. 負の加速度Aで時間Taの間、減速します。
  6. この時点で人工衛星からみてロケットの速度はゼロ。
  7. (おりかえしになります。)
  8. 加速度Aで時間Taの間、戻ってもらいます。
  9. 時間Tbの間、慣性航行してもらいます。
  10. さらに時間Tbの間、慣性航行してもらいます。
  11. 負の加速度Aで時間Taの間、減速します。
  12. この時点で人工衛星に到着、速度はゼロです。

ピーター兄は、ポール弟にくらべ、往路と帰路においての慣性航行の時間が2倍になっています。

さて、実際に上のような実験を行った場合に、ピーター兄のほうがポール弟にくらべて、より若い状態になることでしょう。 この事実を、マリー視点でパラドックスと見るのかあるいはそうではないのか、このことを考えてみたいものです。

上で、女子高生が双子のパラドックスについて論じている内容に関して、私は彼女らが勘違いをしていると断じました。(その後この記述には大きな間違いがあると判明しました。すみません)
焦点は、≪ロケット内部において感じるであろう重力加速度による時計の遅延【のみ】が、双子のパラドックスにおける年齢の差になるのだ≫という勘違いです。この勘違いを示すために、私はピーターポールマリーのお話を作ってみました。ピーターとポールとは、ロケット内部において同じ≪加速度による時計の遅延≫を受けるはず、とマリーは考えます。一方、ピーターとポールとが帰還したときに、マリーは二人に年齢差を観測するのです。慣性航行している時間ないし距離の差が、年齢差の要因となっています。≪加速度による時計の遅延≫をピーターとポールとで相殺可能なようになっているところがミソです。

※相殺されていませんでした。すみません。(後になってあわてて注)

女子高生の会話がまさに行われている瞬間に私が上のようなお話しを思いつけばよかったのですが、残念でたまりません。

相対論の双子のパラドックスは、慣性系の乗り換えを行った者とそうでない者とが経過時間について非対称であることを示しているのであって、それが本質なのでしょう。 無論、全航定にわたって、定性的な話でなく定量的にどうよ?と聞かれれば、一般相対論を持ち出して計算する必要があるのでしょうが、特殊相対論の枠組みの中でさえ、慣性航行の部分でだけでキッチリと年齢差が出てくるのですよ、という認識はしておいたほうが良いと思います。