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■ココログの仕様改悪にみる、@niftyによる視覚障碍者の軽視
ココログの今回の仕様改悪で管理画面や投稿画面が超遅いなどの不平不満が爆発していたわけですけれど。そんな感想を読んでいてふと思ったのが、ひょっとしてCAPTCHA導入して失敗したのか?という疑問だったんですね。CAPTCHA生成が律速段階になっていて負荷がかかりすぎて大変なことに?と。調べていないのでspam対策だけが理由なのかCSRF対策コミでCAPTCHAを導入したのかわかりませんし、本当に律速段階になっていたのかもわかりません。
さて、どんなシステムであれ、spam対策だろうとCSRF対策だろうとなんだろうと、CAPTCHA導入は極めて残念なことであって、他に手段があるのならば是非CAPTCHA導入は避けていただきたいと思うのです。
なぜかを知るために丁度良い参考文献がありましたのでご紹介させて下さい。
@niftyは視覚障碍者を軽視しているのだろうか?と感じさせる仕様変更がココログで行われた。ココログのバージョンアップに伴い、コメント書き込み時に画像認証が導入されたのがその変更である(詳細はブログ:ココログ:ココログサポート:ココログ通信第8回を参照のこと)。
一番問題なのは、画像認証を導入した事で視覚障碍者をブログのコメントから排除する状況を作り出してしまったことである。アクセシビリティの観点から見て、これは改悪といわざるおえない。しかもどちらかというと劣悪な部類である。
ココログで導入されている画像認証は一般的にはCaptchaと呼ばれる手法であるが、画像内にある文字を目で読んで書き込むことで認証を行うため、画像を読むことができない視覚障碍者は認証作業を行うことができない。そのため結果としてサービスから視覚障碍者が排除されてしまうという問題が発生する。
この手法については過去にもGoogleやYahoo!などでユーザー認証の際に導入され、視覚障碍者から抗議の声が何度も上げられている。大きな問題としてニュースでも取り上げられたことがあるので、仕事上ユーザビリティやアクセシビリティに関わりがあるような人にとっては既に知られている事といってよいものである。
#GMAILのサービスでは、たとえば何回かログオンに失敗するとCaptchaによる画像認証が必要とされていたり。これ、最初のログオンからだったら大問題ですよね。
@niftyクラスの企業にはおそらくユーザビリティやアクセシビリティの専門家もいるはずだが、なぜこの手法をブログのコメント欄に採用したのだろうか?
Captcha - Wikipediaにも解説があるが、「Captchaは機械可読ではないように設計されているので、スクリーンリーダのような一般的な支援工学のツールでは解釈できない。」という現状がある。視覚障碍者がスクリーンリーダを使っても認証作業を行うことができないのだ。
追記:ココログスタッフの方々へ。当然であるが、ココログには視覚障碍者と思われる方のブログも存在する。今回の改悪はそういった方々の権利も阻害しているといったことを忘れないでほしい。彼らも大切なユーザーなのだから。
もしも、いろいろ世にあるブログサービスの投稿画面でも画像認証をするようになっていたとしたら…ある日突然にブログサービスがCAPTCHAを採用した…私のスクリーンリーダーではもう何も編集できなくなった…突然のお別れになってしまう私のブログ…みなさんにもお別れも言えない…移転するよと通知も出来ない…自分のブログにコメントすら書き込めない…
まぁその、ココログだけの問題じゃなく、CAPTCHAが引き起こす悲しみは大変なものなんです。
spam対策であれCSRF対策であれワンタイムトークン代わりにCAPTCHAを使うのはどうかと思うなぁ。
20060404追記
画像キャプチャについてこういう反応もあります。
内容の詳細はリンク先を読んで頂くとして、要は『画像認証方式は視覚障碍者への差別だ!』と言っている訳ですが、あまりにも自分勝手な論理過ぎて本気で腹が立ちます。
例えば今回の画像認証の導入によって、JUGEMからはほぼ100%ロボット型スパムを排除する事が出来るでしょう。それによって、どれだけ多くのユーザーが利益を得られると思っているんでしょうか。
またユーザーだけではなく、トラフィック全体のスパムも激減する為、Web環境そのものが改善されるのです。その恩恵は利用者を選びません。
確かに、それによって不自由が出る人々は必ず居るでしょう。でも、それは極一部の人々に限定された話。それなのに、その措置を『仕様改悪』と一言で断罪して良いのでしょうか。
ブログやWebサービスを利用出来なかったからといって死人が出る訳じゃ無いし、それが生活の基盤をも揺るがす程の問題には発展しません。
むしろ、そういった少数派が利用出来ない事によって生まれる潤滑性や利益は大きい筈。当然それらの反要因を改善していく努力は必要ですが、それは断罪に値するものでは決して無いでしょう。
というわけで、この方は、積極的に画像CAPTCHAを使うと宣言なさっておいでです。
この論で行けば、たとえば車椅子用のトイレを公共施設で用意するのは税金の無駄遣いだ、ということにもなります。国が赤字なんだから我慢しろ、車椅子に乗る人は出歩くな、家の中にこもっていたって生きていかれるだろう、という論です。税金の節約によって公共の利益が得られるから、という理屈です。
アクセシビリティの向上は多様な側面を持っています。なによりも弱者への気配りがすぐに思いつきますが、実は全員が利用しやすくなるにはどうしたらよいのだろうかと苦心するところが大事な視点なのです。
画像CAPTCHAを使わなくとも工夫次第でspam防衛は可能でしょう。そういった努力を継続的に続けることがアクセシビリティーの向上方面での努力の本質だと思うのです。すなわち、利用者全員が享受する便利な工夫についていつも前向きになるということです。
こういった視点を失えば、ありとあらゆるものごとが、だんだんと利便性を失っていくことになっていきます。たとえば今、アクセシビリティー禁止法というものが施行されたとします。30年後にふと気がつくと、私たちはきっと生きていくのがつらくなるような社会を目にすることでしょう。
…私たちはいずれは老います。老いた時に、アクセシビリティをないがしろにしてきたツケを払うことになるのです。後悔はしたくないものです。
追記終わり
20060406追記
アクセシビリティーについて、簡単なまとめページがあったので、参考文献としてあげておきます。アクセシビリティー向上はいわゆる障害者のため【だけ】にあるのではなく、すべてのユーザーに利益をもたらすものであって、副産物として高齢者や障害者にとっても利益をもたらすものでもあるとわかります。このことを把握すれば、CAPTCHA以外の方法でspam対策を行うべしということが自然に理解できることでしょう。
また、hasegawayosukeさんから御教示いただいたところによれば、今回のココログのCAPTCHA導入には、CSRF対策の側面もあったと推測できるそうです。
追記終わり