不等式の証明(2)

昨日の日記の続き。

問題:
4つの正数、a,b,c,d が、 abcd=1 を満たすとき、
a^2 + b^2 + c^2 + d^2 + ab + ac + ad + bc + bd + cd
は10以上であることを示せ。

tamoさんからもヒントがあったように相加平均相乗平均の関係を使うのが手っ取り早いです。題意にあわせて効率よく相加平均相乗平均の関係を使う方法の1例として以下のように考えることが出来ます。

正数 a b c d について abcd = 1
なので両辺を自乗して
aabbccdd = 1
このことから以下の4つの式を導きます。括弧の意味はヒトククリということです。
 (aa)(bb)(cc)(dd) = 1   ...(1)
 (ab)(bc)(cd)(ad) = 1   ...(2)
 (ac)(bd)(ac)(bd) = 1   ...(3)
 (ad)(ab)(bc)(cd) = 1   ...(4)

 (2)式の左辺のヒトククリにした4つの正数についての相加平均は
 ( (ab)+(bc)+(cd)+(ad) )*(1/4) 
 (2)式の左辺のヒトククリにした4つの正数についての相乗平均は
 ( (ab)(bc)(cd)(ad) )^(1/4) 
 であるが、(2)式によりこれは 1 に等しい。ここが味噌。
 (相加平均)≧(相乗平均)
 なので
 ( (ab)+(bc)+(cd)+(ad) )*(1/4) ≧ 1 
 がわかるので、両辺を4倍して、
  ab+bc+cd+ad ≧ 4   ...(5)
 がわかります。
 
 同様の論議で (3)式 (4)式 について考えることで
  ac+bd+ac+bd ≧ 4   ...(6)
  ad+ab+bc+cd ≧ 4   ...(7)
 がわかります。
 同じく、(1)式から
  a^2+b^2+c^2+d^2 ≧ 4   ...(8)
 もわかります。
 以上で準備が出来ました。

 (5)式(6)式(7)式 から
 ab+bc+cd+ad+ac+bd+ac+bd+ad+ab+bc+cd ≧ 12
 整理して両辺を2で割ると
 ab + ac + ad + bc + bd + cd ≧ 6   ...(9)

 (8)式(9)式 から
 a^2 + b^2 + c^2 + d^2 + ab + ac + ad + bc + bd + cd ≧ 10
 以上で終わりです。

こういうのって思いつきですよねぇ。

年齢を当てる(さらに謎編)

昨日の続きです。ちょっと謎が深くなったので(教えてプリーズ♪)。もう一度問題を拙訳と原文とで。

2人の金髪の女性が通り沿いのカフェで座っていた。最初の女性は、彼女には3人の娘達がいると言った。3人の娘達の年齢を、それぞれ全て掛け合わせると36になること、それぞれ全て加えると、丁度、(そこからみえる)通りの向こう側の家の番号になるのだと言った。2番目の金髪の女性は、それだけの情報では3人の娘達のそれぞれの年齢は判らないと応えた。すると最初の女性はそのことを肯定し、さらに情報を付け加えて『一番上の娘は美しい青い目をしているのよ』と応じた。すると2番目の女性は3人の娘達のそれぞれの年齢が判ったと言う。あなたにも判る筈だがどうですか?

Blondes (the puzzle from Oldaque P. de Freitas)

Two blondes are sitting in a street cafe, talking about the children. One says that she has three daughters. The product of their ages equals 36 and the sum of the ages coincides with the number of the house across the street. The second blonde replies that this information is not enough to figure out the age of each child. The first agrees and adds that the oldest daughter has the beautiful blue eyes. Then the second solves the puzzle. You might solve it too!

まず、上の問題に対する世の中の大方の人の平均的な解法を書いてみます。

最初の条件から積が36であるとわかるので3人の娘達の年齢の積の一覧表を書きます。あとあとの準備のために、一覧表の各行の右側には和を書いておきます。

※細かいことを言えば年齢を自然数として良いのかどうかを本来は考察すべきです。年齢を実数で表して良いものとすると、生まれたての赤ちゃんの可能性まで考えれば、このパズルの条件では年齢当てがかなり困難でしょう。しかしBlondesは年齢当てが成功したことを認める会話をしています。従って恐らく常識通り年齢を自然数でカウントしているのでしょう。1歳6ヶ月=1.5歳とかだったら充分に考察対象のはずなのですがね♪

(1) 1、1、36 : 38
(2) 1、2、18 : 21
(3) 1、4、9  : 14
(4) 1、6、6  : 13
(5) 2、2、9  : 13
(6) 2、3、6  : 11
(7) 3、3、4  : 10

(HTMLのtable要素でマークアップしていないのは間違いかもですが許してください。)

無論、これだけでは3姉妹の上から順番に年齢がわかるわけでもありません。そこで年齢の和についての2番目の条件を使います。『通りの向こう側の家の番地』には定冠詞がついていますので、たぶん特定の家を指差したかなにかでしょう。

ここでは、『ほらほらあそこの家の番地が読めるでしょ?3姉妹の年齢の和はあの数字と等しいのよ』と言われますが、それでも各姉妹の年齢がわからないというのが2番目の条件のポイントです。ヒントを出している婦人は、上記一覧表の和の欄に並んでいる数、38,21,14,13,11,10 のどれかひとつを『通りの向こう側の家の番地と等しい』と発言しているわけです。ここで例えば番地が38だとしましょう。それならば3姉妹の年齢は(1,1,36)であると判明してしまいます。同様に、21,14,11,10のどれかであっても、年齢について判明してしまいます。ここまでヒントをもらっても3姉妹の年齢がわからないとするならば、それは何故でしょう。番地が13だった時では、(4)(5)の2通りの可能性があるのでどちらだろうかと判らなかったということになります。結論として、和は13です。

『これだけだとわからないわ』と言われ、ヒントを出している婦人は『そうだわねぇ、これだけでは無理よねぇ』と言います。…実際のところこの種の論理パズルでは『そうだわねぇ、これだけでは無理よねぇ』と言われた瞬間に『あ、そうおっしゃってくれるのなら私わかったわ』とか、なりかねないのでビクビクものなのですが(笑)どうやらその可能性はなさそうです。

さて、この問題の最後の条件を考えます。『一番上の子は青い目なのよ』というヒントです。ヒントを出す側はこれが決め手になるであろうと判断しています。これ、面白いヒントですよねぇ。頭がクラクラします。主題として金髪が出てきますからねぇ。碧眼は金髪と関係が深いのですよねぇ文化的に。ですから論理パズルを解きなれていない人にとっては、この碧眼という言葉のイメージに引きずられるわけです。そして最後の条件、ヒントの真の意味を見失ってしまうのでしょう。そういう心理的な仕掛けも施されている、と考えられますがいかがでしょうか。なお、西洋的には、金髪碧眼は頭脳程度が素晴らしいとは言えない、という俗説もあるようでして。そんな2人が論理パズルの題材になるような会話をしているところも出題者の影の狙いなのではないかと思われます。このパズルの解を見出せばそういう文化的な解釈も出てくるということで。なお肌の色や目の色などで人の能力を差別ないし区別することは私は絶対反対ですのでそのへんエクスキューズさせて下さい。

余談はさておき、ここでは『一番上の子は(the oldest daughter)青い目なのよ』と英文表記付きで単数であることを強調させて頂きますが、これが情報になっているのですね。さきほどの一覧表からわかることは、(4)(5)の2通りの可能性があることでした。(4)では上の子は6歳6歳の双子ですから一番上の子(the oldest daughter)という単数表現に引っかかるのです。一方(5)では上の子は9歳、下の子は2歳の双子です。これなら『一番上の子は(the oldest daughter)青い目なのよ』と言っても良いことになります。これで3姉妹の年齢構成がわかりました。

以上が、標準的な解答だと思います。

しかしですねぇ、ちょっとした謎が出てくるのですよ。この標準的な解答には不備があるのではと思っているのです。御意見を賜りたく。

(4) 1、6、6  : 13

最後のヒントで「上の子は」というのが決定打になったというのが標準モデルの解答なのですが、これには穴があるのではないでしょうか?

こんな例はどうですか?長女を産みます。その11ヵ月後に次女を産みます。で、丁度、この会話をしている今、運が良いことに、長女も次女も6歳なのです!

そんなの世間的に見ないから却下!とかおっしゃらないで下さいね。実は私は小学校の頃、同じ学年にニ卵生双子ではない顔のソックリな兄妹がいたのをみて大変に驚いたことがあります。余計な解説ですが兄妹ですから当然一卵性でもありません。誕生日が4月と3月でした。御両親は頑張ったのですね。特にお母さんが。

さて、このような状況を考えると、(4)の時でも、一番上の子(the oldest daughter)が決定できます。(5)の時同様ですね。いったいどちらでしょう?結論を言えば、3姉妹の年齢は決定できていません。

以上が標準的な解の穴です。なにか良い回避方法がありますでしょうか?

それとですね、穴かどうかはおいておきますが、もうひとつ重大なことを標準的な回答では考慮していないのです。以下に申し上げます。

ヒントを出していた婦人は解答を試みている女性の実の母親であったという可能性です。

英語でTwo blondes are sitting in a street cafe,なのですがね。ブロンドというと日本人は大人の女性を思い浮かべがちです。しかしながら、あちらの人が思い浮かべるのはただ単に金髪の人です。男性でも構わないし、子供でも良いのです。生まれたばかりの赤ちゃんを一目見て『あぁ良かった、ブロンドだし綺麗な青い目よ』とか思う親は結構いるのです。当然のことながら、Two blondes are sitting in a street cafe, の場合には、お子様がそこにいても不思議じゃないハズなんです。(文化的にみてあの表現だとやっぱり大人だよ、子供はありえないという英語ネイティブな方の御意見を頂ければ幸いです。)…というわけでanother穴になってはいないでしょうか?きちんと論理的にこの親子説分岐では題意の各条件を満たしえないと説明しておくことが求められるのではないでしょうか(笑)。もしくは出題時点で2人のBlondesは同じ年齢であると釘を刺して枝を刈っておければ良いのでしょうか。

一応論理パズルですので上記の可能性を考慮してみますと、うふふ。もっと言うとですね、劇的な小説のようなお話まで考慮したくなるのですよね。不幸な事故で離れ離れになっていた母娘。娘は幼児だったので事故の記憶がない。娘は養育者のもとでスクスク育っていたが、ある日、養父にこう言われる。『おまえは立派な私の娘だ。学校でもキチンと勉強しているしな。友達にも優しいし街の掃除も進んでしている。誇りに思っているよ。ところでもう冬休みだがお前に会わせたい人がいるんだよ。誰かって?会うまでは内緒だ。』娘は養母に付き添われてCafeに行く。養母は娘をおいていったん帰宅した…

賢い娘は論理的に目の前にいる優しい人物が実は会いたくて会いたくてしょうがなかった自分の実の母親であったということを3番目のヒントで悟ることはないのだろうか?はたして娘の目の色は鳶色だっただろうか?実母はどのような目をして(優しい目ですね、ちょっと涙に濡れていたかも)話をしたのでしょうか。

『おじょうちゃん、こんにちは。私にはね、娘が3人いるのよ。』『はじめまして。へぇっ。おいくつぐらいなのですか?私、お友達になれそう?』『ええ、ええ。そうねぇ。3人の娘の歳を全部掛け合わせるとね、36になるのよ?おじょうちゃんは学校で掛け算はもうならったのかしら…』

通りの向かいの家の番地は丁度…神様のイタズラなのでしょうか。

そんなことを考えています。馬鹿でしょ、私。(笑)