羊堂本舗の中の人は二名

羊堂本舗のsheepmanさんは実は二名であって、羊堂本舗の記事作成は、コンピュータ関係の記事を書く人(sheep・F・man さん)と、法律経済社会面の記事を書く人(sheepman A さん)の分担作業であったと、ちょっと前に知って「へぇぇ」と思いました。「藤子・F・不二雄」と「藤子不二雄A」に名前をひっかけてあるあたり、ハンドルまでお洒落だなぁと思いました。この件に関する御本人(達)の声明は以下の通り。

…で、つい先日、今月に入ってから、上記記事が四月馬鹿であることがわかった次第。私、同じ日に結城浩さんの日記の記事、SHA-1を利用した素因数分解の高速なアルゴリズムにもスッカリ騙されてしまいまして、うぉぉ、素因数分解が早く出来ちゃうなんて凄い凄いと喜び、素数探索に執念を燃やす STUDIO KAMADA さん掲示板にまでタレコんでしまったという経験があります。幸い、KAMADAさんの掲示板では、投稿がすぐに反映されることがなく、KAMADAさんが目を通されてから表示される仕組みでしたが、その切は本当にお世話になりました>KAMADAさん。

そうです。私は騙されやすい人なのです。羊堂本舗さんや結城浩さんが嘘記事を書くわけがないという正常性バイアスがかかっているのですね。

163

ええと先日9/21のコメント欄で盛り上がった円周率と自然対数の底と163との関係について以下、調べて参りました。

実数は有理数無理数とから成り立っています。無理数は、3次方程式などの整係数の代数方程式の解になりうる無理数と、そうでない超越数とに分類されます。整係数の代数方程式の解となりうる無理数の無限個の個数(ニヤリ)は、自然数の無限個の個数と同じだけ(ニヤリ)あること(一対一対応可能、可算個、可付番)が解っていますし、カントール対角線論法で示された通り無理数全体では、自然数の無限個の個数など遥かに超える個数(ニヤリ)の無限個でありまして、従って、超越数は、代数方程式の解たりうる無理数よりもはるかに量が多いのであります。ところが超越数ってなかなかみつからないものでして(ニヤリ)、そこそこ一般に知られているのは円周率Πと自然対数の底eぐらいだったりします。代数方程式の解たりうる√2は超越数ではありません。超越数ならば累乗したり、色々な累乗を組み合わせたりしても整数にはなりません。そんなΠなりeなりが互いに組み合わさって単純な整数となることは俄かには信じがたいというのが不思議さの根源でして、先のコメント欄ではビックリするわけです。

マーチン・ガードナー(Martin Gardner)が、1975年4月のScientific American(邦訳版は日経サイエンス)の彼のコラムである数学ゲームにて発表したRamanujan Constant(ラマヌジャン定数)に関する記事が最もわかりやすい説明となっていまして、概要をちょっと。

マーチン・ガードナーの説明によれば、R=eπ√163が、信じがたいことに丁度整数になっており、その値は、262537412640768744 であるとのこと。また、ガードナーの指摘によれば、インドの夭折の天才数学者ラマヌジャンが、このことを1914年の論文で数学的に予想していたこと、フランスの数学者が最近になって(1975)証明したとのこと。

…マーチン・ガードナーは、数ヵ月後に、上記のコラム記事は四月馬鹿であったと言っております。同じ記事上で四色で塗り分けられない地図も発表していまして、こちらは有名っぽいですけどね。面白い記事としてはたとえば、 ̄torito_ パズル遊びへの招待 1−26.四色問題が良いでしょうか。ええと(汗)四色で塗り分けられない地図は実は確かに四色で塗り分けにくい地図であることが一松 信先生著の四色問題―その誕生から解決まで ブルーバックス 351でも示されています。けして根拠の無いデタラメを言わないところがマーチン・ガードナーさんのエライところでありまして。262537412640768744の件でも、ラマヌジャンが実際に「これって整数に近いよね」と言ったり…とかいうのも、ありそうな話だったりします。

A large class of irrational "almost integers" can be found using the theory of modular functions, and a few rather spectacular examples are given by Ramanujan (1913-14).

Eric W. Weisstein. ”Almost Integer.” From MathWorld--A Wolfram Web Resource.より引用。

この辺の知識がある人にとっては、四月馬鹿がより強烈に効いてしまうというあたりがマーチン・ガードナーさんの力量ですね。思えば結城さんみたいな暗号学の大家(たいか)が仰るのだからという正常性バイアスが私にかかっていたことは否めないわけでして。さぁかかってこい!来年はファインマンさんネタでよろしくお願いします。っていうか今何月よ?

…先日のコメント欄のベナレスさんの163は、小数点以下28桁までゼロが続く素晴らしい近似式であることがわかっております。負けましたよ、本当に。

あ、読み返したらラマヌジャン定数のことに触れていませんでした。ラマヌジャン定数の項を御参照下さい。modular functions の理論から色々出てくるのですか…