アシモフの陽電子頭脳のアーキテクチャ

SFばなしです。作家アシモフのロボット工学三原則はつとに有名でアシモフの未来世界において欠かせない道具立てとなっていますし他のSF作家による作品群にも大いに影響を与えています。一方、このロボット工学三原則を内蔵している「陽電子頭脳」のアーキテクチャについては、アシモフは作品中で一切語っていません。陽電子頭脳ってどんなものなの?と私などは子供のころから不思議でしょうがなかったものです。アシモフの未来世界をシェアワールドにして何人かの作家がファウンデーションシリーズを書きついでいまして私も熱心な読者なのですけれども、それらの作家たちの中にはハードSFを得意とする面々もいらっしゃいます。それでも彼らは陽電子頭脳について語っていないのです。細かいSF設定は比較的ハードっぽい雰囲気で構築されているのに…あぁ、私は陽電子頭脳のアーキテクチャが知りたい!知りたいのです。陽電子頭脳をかかえたロボットがいかにして人間に恋をするのか知りたいのです。(そこかよ…三原則に抵触せずに恋…とかは蛇足です。)
ともあれ、最近になってこの謎のアーキテクチャの背景たりえる構想が頭の中に湧いてきてしまったので老後の自分のためにもメモしておくことにしました。

鍵となるのは、「非アーベリアンなエニオンを使ったトポロジカル量子コンピュータ(Non-Aabelian Anyons and Topologial Quantom Computation)」です。このアイデアは、実在しますので検索エンジンでひっかかります。エニオン対を生成し一列に並べておいてから隣同士のエニオンを交換する操作を行うことでそれぞれのエニオンの相対論的世界線を組みひもにみたてたトポロジカルな演算を行います。エニアンは小さな外乱を受けてもトポロジカル的な側面は保存されますから、通常の量子コンピュータアーキテクチャに比べて状態の重ね合わせの崩壊による影響を少なくできます。なお、エニアンはフェルミオンやボゾンの基本粒子とは異なりまして準粒子です。たとえば二つのフェルミオンを物性的に二次元構造の中に閉じ込めて互いに量子もつれをさせてやることによって実現可能でしょう。分数量子ホール効果とも関連が深いとされますので実際にトポロジカル量子コンピュータの基本デバイスとしてはそちらの方向から攻めるのかもしれません。現段階では非常に低い温度まで冷却しなくてはいけませんけれども何か新しい工夫がでるかもしれませんね。かつての常温超伝導のように。

さて、ざれごとのはじまり…陽電子頭脳開発(笑い)への方針ですが、ポジトロ二ウムを使います。これは電子と陽電子ポジトロン)が互いに捕捉しあっている準粒子です。これを2次元の層構造の中でエニオンとして存在させることで従来型のトポロジカル量子コンピュータよりも非常に高い温度まで安定した量子ビットを実現できます。ちなみに対消滅は量子ゼノン効果を使います。層構造が対消滅を原理的に禁止するのです。複素数位相の中で拡張されたパウリの禁止則が使われるのですね。USロボット社はすでに特許を取りました。スーザンキャルビンが入社する以前のことになります。
なお、原理的には陽電子頭脳もわれわれ人間の頭脳も量子コンピュータであることが知られていますが、ある種の陽電子頭脳が人間の心を読んだり操作したりすることができる事を発見するのはR・ジスカルドの登場を待たねばなりませんでした。R・ダニールの2万年におよぶ闘いはこの時より始まります。また、これらの心理操作が3原則を超える契機ともなったことは記憶に留めるべきことでしょう。