ブレーキ操作が行われたのに制動しなかったのでは?(尼崎JR脱線事故)

なんとなく、イヤな感じはまだまだぬぐうことができないので、尼崎JR脱線事故に関して気になっているところをメモ。

死してなお非常ブレーキをかけていた運転士

事故後全ての列車内の犠牲者の確認終了後のニュースで、運転士は席を離れず非常ブレーキをかけた格好で即死していたと、聞いたことがあります。その時に私は「あぁ、死してなお闘っていたんだなぁ、よく頑張った>運転士」と強く思ったものですから印象深く憶えています。

非常ブレーキを運転士がかけた形跡がないとのニュース

神戸新聞ニュース:総合/2005.08.05/ 異常運行浮き彫り 運転士心理の解明課題
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/00026782sg300508051000.shtml


非常ブレーキは一、二両目がマンションに激突する直前に作動していたが、運転士がかけた形跡はなかった


非常ブレーキは手動のほか、連結が外れた際などに自動的に作動。事故調委によると、脱線後に連結器が外れるなどしてかかった可能性が高い。


列車自動停止装置(ATS)の記録から調べると非常ブレーキは効いていなかったのだ。

非常ブレーキはかけたのに効かなかったのか?

ATSの記録と運転士の死亡時の姿勢とが矛盾しているのは何故なのだろうか?気になってしかたがない。ひとつの仮説としては事故調が言うように、当該運転士は列車が電柱にぶつかったことをもってして意識混濁から立ち直りあわてて非常ブレーキをかけた、というもの。既に連結がはずれているので運転士の意志は機械に反映されずに自動的な非常ブレーキのみがかかる。新聞的にはこの仮説だ。

事故の原因は全て運転士の心理が背負うことになる。

そしてもうひとつの可能性は、当該運転士が、もっと手前で、非常ブレーキをかけていたにも関わらず、機械が言うことを聞かなかった場合だ。

●非常ブレーキなぜ使わず? 首ひねる運転士ら JR脱線
http://www.asahi.com/national/update/0805/TKY200508040452.html


JR西日本によると、事故を起こした207系車両の運転台は、左にアクセル、右にブレーキがある。8段階ある通常のブレーキはレバーを押しあげていくと制動力が強まり、最も奥まで押し込むと、非常ブレーキがかかる仕組みだ。通常、運転士が危険を感じた場合には、全車両一斉に強い制動力がかかる非常ブレーキを使うのが基本だ。
公開された分析結果によると、すでに緩和曲線に入り約30メートル過ぎた時点で、ブレーキが操作されている。ところが、通常のブレーキにとどまり、非常ブレーキが作動したのは脱線後だ。

ある運転士は「ブレーキ開始の遅れは、意識を失っていたとか、ぼんやりしていたなどと説明がつく。しかし、気づいてブレーキをかけているのに、非常位置まで押し込んでいないことが理解できない」。

速度から計算すると、通常のブレーキをかけている時間は3秒間を超える。別の運転士は「ブレーキは慌てれば慌てるほど、一気に押し込むもの。車体に強い遠心力がかかるころに気づいたのであれば、よほど慌てていただろうに、なぜ通常のブレーキで止めているのか」と話す。

最奥まで押し込んで非常ブレーキをかける操作をしたが、その操作が制動系列にまで伝わらなかった可能性のほうが納得が行く。

通常ブレーキも効かなかった

神戸新聞ニュース:総合/2005.05.14/「制動数秒不能」運転士ら証言 脱線同型車両
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou/00003121sg300505141400.shtml


尼崎JR脱線事故で、脱線した快速電車と同じ207系と呼ばれる車両などで、一時的にブレーキが利かなくなる「オーバーロード」(OL)と呼ばれる現象が多発していることが十四日、複数の運転士らの証言で分かった。高速から減速した際、乗用車のエンジンブレーキに当たる「電力回生ブレーキ」が突然利かなくなり、圧縮空気を使いブレーキパッドで車輪を締め付ける「空気ブレーキ」への切り替えまでに、数秒間の「制動の空白」ができるという。

事故現場のカーブ手前でも複数の運転士がこうした経験をしたと証言。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調委)は事故との関連性に注目している。

電力回生ブレーキは、モーターを回す抵抗を制動力に変え、減速させるエンジンブレーキのような仕組み。制動と同時に、モーター回転で発生した電気を架線に戻すことができるが、急制動で還流する電気が架線電圧を急上昇させた場合、モーターのショートなどを避けようと、車両自体が回路を遮断する。

その後は空気ブレーキが強まりフォローするが、切り替わるまで一、二秒の空白が生じ、一時的にブレーキが利かない状態になるという。

事故を起こした快速電車は七両編成。二、三、五両目にモーター車があり、高速時は電力回生ブレーキで、低速時は空気ブレーキで主にカバーしている。

兵庫県警尼崎東署捜査本部の調べでは、快速電車は車体から回収されたモニター制御装置の記録から、カーブが始まる手前約三十メートルで非常ブレーキが作動したとみられ、直前の速度は百八キロだった。

同乗していた車掌(42)の供述などによると、非常ブレーキ作動地点近くまで制限速度の百二十キロ程度で走行していたといい、事故調委は、制限速度七十キロのカーブに近づく中、高見隆二郎運転士(23)=死亡=が減速しようとした際、OLが発生した可能性も考えられると指摘。「十回運転すれば三回はOLが起こる」との現役運転士の証言もあり、十分に減速できないままカーブ始点に迫ったことが、非常ブレーキ作動につながったとの見方もできる、という。

うーん、車掌にも非常ブレーキをかける権限と装置が与えられているはず、と思ったけど。車掌を契約社員にするしないで労組が抗議していたはず。

不信感

通常ブレーキ操作するも制動系に伝わらず、非常ブレーキも同様だとするならば、全く同じように事故が発生しうるのであり、運転士個人の心理的な資質におしつけて終わらせるわけにはいかないと思う。徹底調査が望まれるのだが、事故調査委員会がそこまで行うかどうか…

車両構造に欠陥(鉄道専門家川島さんが著書)

神戸新聞ニュース:総合/2005.08.03/ 「車両構造に欠点」 鉄道専門家川島さんが著書
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/00026144sg300508031000.shtml


川島さんが「事故の最大の理由」に挙げるのが、「ボルスタレス」と呼ばれる構造。かつて車体と台車の間には「ボルスタ」と呼ばれる梁(はり)があり、カーブをスムーズに曲がったり車両の揺れを抑えたりする役割を持っていた。

だが最近は、ボルスタをなくし空気ばねで直接車体を支え、揺れを調節する「ボルスタレス台車」が主流で、事故を起こしたJR西日本の207系をはじめ、全国の大半の電車がボルスタレスという。

著書では、ボルスタレスは軽量化でき走行性能が高い一方、横揺れには弱い、と指摘。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会も、事故車両はカーブ外側の空気ばねが縮み、内側は膨れ上がったため脱線しやすくなったと見ており、「台車の改良が必要」と主張する。

またほかにも、先頭車両にモーターがなかったため重心が高く、転倒しやすくなっていた、連結器が外れやすいため、先頭車両だけが軌道を大きく飛び出しマンションに激突した、などの車両の問題点を挙げた。


個人的には車両自体が軽すぎるという欠陥が気になる。ちょっとしたブレーキの効き具合でレールからはじかれるのよね。レール側に脱線防止ガードもついてなかったし。ATSがボロかったのは周知の通りだし。

総合的に駄目だった可能性がかなり高いと思うデスよ。もしも運転士が意識もう朗だったから悪いという結論を事故調が出したとしたら、、、