奄美大島にはハブがいる、そしてヤマタツヒメが抑えてくれる

ハブは毒持ちなのでいろいろな地方で怖がられています。奄美大島ではハブ除けのマジナイがいくつかあるのですが、その中に、「やまたつひめ」や「やまたつひめかみ」という謎の存在が登場します。ハブ除けに神威がある超越者として位置づけられているようです。少なくとも今日現在、Googleで検索してもヒットしないようではあります。ただし、競馬の馬の名前としてはヒットするのですけれど。その馬はどういう謂れでそういった名前をつけたのでしょうねぇ。

「やま・たつ・ひめ」か「やまた・つ・ひめ」か

その神の名前が「やま・たつ・ひめ」なのか「やまた・つ・ひめ」なのか知りたいと思うのです。竜蛇信仰はよくみられますから、「山竜姫」も考えられます。ハブの元締めにザコハブをコントロールをお願いするというタイプなのかもしれません。でもねぇ。一般に竜蛇信仰は海河から蛇がやってくるという水神信仰なので、「山」がつく「山竜」はどうもしっくりきません。
その反対に、「やまた」の「ひめ」だとすると? 私なんかには胸が騒ぎます。というのは、有名な「やまたのおろち」と関連性が出てきそうだからです。「やまたのおろち」は八つの首を持つ蛇神で、スサノオのみことに退治されたことになっているからですね。「やまた」という土地があって、そこの竜蛇神信仰を持つ集団がスサノオに敗北した…としても面白そうなのです。
で?「やまた」というクニが「邪馬台国」となにかしら関連があったら? 出雲のスサノオが九州は邪馬台からの侵入者を退治した話にすらなりえる?
ま、証拠がないので何も言えないというのが正解ですけれど。
日本神話には邪馬台国がさっぱり出てこないわけですが、スサノオに退治された後、スサノオの後継者である大国主近畿大和王権に征服されたと考えれば、ヤマタノオロチという神話レベルで若干の残滓が残っているにすぎない、という解釈も成立しそうですね。

やまた・つ・ひめ

ちなみに邪馬台を「やまた」と捉えることは、古代中国の音韻についての学問の成果からすると、少々厳しいです。 邪馬台国と魏との外交の通訳に古代朝鮮の人でもいれば、ぐっと近づきますけれど。

ハブ除けの呪文

この項、2013/01/11に書いております。

祝女ではなく、一般人の、ハブ除けの呪言は以下のとおりとのことです。


しかぬこまだらぬ
虫あれば
やまたつひめに
かくと知らさん 儀法
と唱えて、山や畑にはいるとのこと。

奄美大島物語、文英吉(かざり えいきち)著 より。